オランダに盗まれたドイツ海軍の新型艦建造契約

ドイツ海軍が計画した次期水上戦闘艦艇「Mehrzweckkampfschiff 180(MKS180)」の入札が行われ、その結果にドイツ造船業界が失望していると報じられている。

海外に盗まれたドイツ海軍の新型艦建造契約

ドイツ海軍の次期水上戦闘艦艇MKS180は4隻一括発注され入札の結果、約53億ユーロ(約6,500億円)でドイツ連邦軍史上初めて国外(オランダ)の造船所が落札した。

因みに、落札額もドイツ海軍史上最高額だ。

問題は、ドイツ北部に位置するキールの造船所も入札に参加していたため、ドイツ海軍史上最高額の契約が国外に盗まれたと失望感を滲ませている。

ドイツの防衛産業界は造船所や雇用維持、関連サプライヤーの保護のためMKS180建造は最低でも70%を国内で行うべきだと主張してきた経緯があるため、今回の落札結果に衝撃を受けている。

出典:Dr. Karl-Heinz Hochhaus / CC BY 3.0

今回発注されたドイツ海軍の次期水上戦闘艦艇「MKS180」は世界中の気候に適応でき、強力な個艦防空能力や水上戦闘、海賊や小型ボートなどの非対称戦闘にも対応できる能力を備えたフリゲート艦で、母港から出港し約2年間の連続運用が可能と言われている。

約2年間の連続運用とは、2年間ドック入りすることなく、簡単な整備のみで運用が継続できると言う意味で艦のライフルサイクルコスト削減につながる。

さらに2年間という連続運用に対応するため乗組員は4ヶ月毎に96時間以内で交代できると言われており、出来るだけ港に停泊する時間を削減することが求められているのが特徴だ。

そして米国の沿海域戦闘艦が採用した武器や各種装備のモジュール化を取り入れて、多任務対応能力も持ち合わせている。

そのため「MKS180」のことをドイツでは「スーパーシップ」とか「万能艦」と呼んでおり、非常に期待値が非常に高い。

欲張り過ぎの建造プランは実現するのか?

ただし、頭の中で想像した革新的なアイデアは現実になった瞬間、魔法が解けたかのように色褪せることがある。

出典:Public Domain インディペンデンス級コロナド

米海軍が開発した革新的な沿海域戦闘艦は、実際に建造してみると予想もしていなかった問題に次々と直面し、結局モノにならなかった。

最大の問題はドイツの「MKS180」も採用した武器や各種装備のモジュール化と約2年間の連続運用に耐える耐久性の確保が出来るのかだ。

これが実現するのなら艦を小さくし港に停泊する時間を削減できるので、コストの削減や運用効率の向上が期待できるのだが、武器や各種装備のモジュール化に米海軍は失敗している。

米海軍は武器や各種装備のモジュール化に大金を投資したが、水上戦の武器パッケージしかまともに機能せず、対潜戦と掃海パッケージは未完成のままで、結局、この2つのパッケージは開発が放棄された。

もっと言えば沿海域戦闘艦のコンセプト自体が放棄され、武器や各種装備を恒久的に搭載し、より強力なミサイルまで追加する動きを見せており、米海軍も沿海域戦闘艦が失敗であったことを認めている。

そして最も実現できるのか怪しいのは、約2年間の連続運用に耐えられるだけの耐久性確保の部分だ。

ドイツ軍が装備する兵器の稼働率は、お世辞にも高いとは言えない状況で、これだけ多機能=複雑な船の運行を2年間も維持できるのか非常に怪しく、米英でも艦艇の稼働率を引き上げるというコンセプトの元に開発された艦艇は、ことごとく失敗しており、一体、どのような魔法でこれを実現させるのか非常に興味を惹かれる。

本当に「MKS180」が挙げるコンセプトを全て実現すれば、非常に画期的な出来事になるが、管理人には、どうしても欲張り過ぎたリスクの高い建造プランに見えて仕方がない。

 

※アイキャッチ画像の出典:Ein Dahmer / CC BY-SA 4.0 125型フリゲート

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